mokueca を生み出された小物作家であり、IFPA認定アロマセラピストでもある藤澤眞理さんの、寄木との出会いとアクセサリーを形にするまでのストーリーをご紹介します。
木が重ねてきた時間に、香りという新しい時間を重ねる。
ひとつとして同じものがない木目。長い年月をかけて自然乾燥された木。そして、50年以上の経験をもつ職人の手によって生み出される、寄木。そこに、植物から生まれた香りを重ねる。
そうして生まれたのが、「mokueca(モクエカ)」です。
でも、mokuecaは最初から「寄木アクセサリーを作ろう」と始まったわけではありません。
はじまりは、一組の「香りを身につけられるアクセサリー」との出会いでした。そこから、長い素材探しが始まりました。
「香りを身につける」ために、どんな素材がいいのだろう。
香りを身につけられるものを作りたい。そう思ってから、木製ビーズ、革、布、陶器……。思いつく素材を、いくつも試しました。
けれど、どれもしっくりこない。香りをつけるための「道具」を作りたいわけではありませんでした。
身につけた瞬間に、
「なんだか嬉しい」
「これをつけて出かけたい」
「今日はどの香りにしよう?」
そんなふうに、心が少し弾むものを作りたかった。だから、なかなか「これだ」と思える素材に出会えませんでした。
一年以上、素材を探し続けました。
そして、ある日。
偶然目にした、ひとつのWEBショップ。そこに掲載されていた寄木を見た瞬間、
「なにこれ?!見つけた。」
思わず、そんな言葉が口からこぼれました。色も、木目も、模様も違う。ひとつとして同じものがない。自然の木が持つ美しさと、人の手による繊細な技術。その両方が、一つの小さな寄木の中にありました。
「これだ。」
そう思いました。
なぜ、この寄木だったのか。
その寄木を作っていたのは、徳島にある木工所でした。私にとって徳島は、これまでも何度も大切なご縁をいただいてきた場所。だからでしょうか。その寄木を見つけたとき、
「この寄木に呼ばれたのかもしれない。」
そんな、不思議な確信が心の中に生まれました。
そこから少しずつ、寄木を使ったアクセサリーを作り始めました。マルシェに並べると、手に取ってくださる方がいる。「素敵ですね」と言ってくださる方がいる。小さく始まったものづくりが、少しずつ人の手へ渡っていきました。
そして数年後。思いがけないご縁から、「この商品を、うちのサイトで扱いたい。」そんな嬉しい声をいただきました。
一人で始めた小さなものづくりが、また新しいご縁によって、次のステージへ動き始めたのです。
でも、その時にはまだ知りませんでした。この寄木との出会いが、自分自身の人生にも、新しい扉を開くことになるなんて。
「この寄木じゃないとだめ。」
「これ以外にない。」そう確信した寄木。
だからこそ、
この寄木は、どんな場所で作られているのだろう。
どんな人が、この木に触れているのだろう。
どんな想いで作っているのだろう。
実際に見て、触れて、お話を聞いてみたい。
そんな気持ちが強くなり、寄木を作っている山口木工さんへ、メールを送りました。
正直、「お断りされるかもしれない。」そんな気持ちもありました。ところが、メールを送った直後にエラーメッセージ。
「届いていないのかもしれない。」そう思い、掲載元へ問い合わせました。
すると、ご担当の方がすぐに確認してくださり……その数分後。山口木工さんから一本の電話がかかってきました。
「ぜひ一度、見に来てください。」
その言葉が、本当に嬉しくて。メールを送ったときには、まさか二日後に徳島へ向かうことになるなんて、想像もしていませんでした。
人から人へ。ひとつのご縁が、また次のご縁へとつながっていく。その瞬間から、mokuecaの物語は大きく動き始めました。
30年以上の時間が、一つの寄木になるまで。
工場を訪れるまでは、「きれいな寄木。」ただ、そんなふうに思っていました。でも、実際にその場所を訪れて、初めて知ったのです。
この美しさは、一朝一夕に生まれたものではないということを。そこには、長い時間と、受け継がれてきた技術がありました。
仏壇づくりで培われてきた技術。今では手に入りにくくなった、唐木や銘木と呼ばれる希少な木々。そして、30年以上もの時間をかけて自然乾燥された木。木は、すぐには材料になりません。長い時間をかけて乾燥させ、木の状態を見ながら、ひとつひとつ向き合っていく。
そして、異なる木を組み合わせ、職人の手で一つの寄木へと仕上げていく。
その工程を実際に見て、「きれい」という言葉だけでは表せないものが、この小さな寄木の中に詰まっていることを知りました。
木が重ねてきた時間。職人が積み重ねてきた技術。
そのすべてが重なって、一つの寄木が生まれている。
帰る頃には、「この寄木を使いたい。」ではなく、「絶対に、この寄木じゃないとだめ。」そんな想いに変わっていました。
「木も喜んどる。」
工場で聞いた、忘れられない言葉があります。小さな端材まで大切に使っていることについて、「こんなに小さなところまで使ってもろうて、木も喜んどる。」そう言っていただきました。その言葉が、心に深く残りました。
木を、単なる「材料」として見ているのではない。
長い時間を生きてきた木そのものを、大切なものとして扱っている。
その姿勢に触れたとき、私が作りたかったものの意味も、少しずつ見えてきました。
mokuecaは、ただ「香りをつけられるアクセサリー」ではない。
長い時間を生きてきた木に、植物から生まれた香りを重ねる。
そして、そのアクセサリーを身につける人が、そこに自分自身の時間を重ねていく。
そういうものにしたい。そんな想いが生まれました。
木の時間と、香りの時間。
木は、何十年、何百年もの時間を生きます。
植物もまた、はるか昔から、香りという恵みを私たちに届けてきました。
そんな長い時間を経て生まれた、
木と香り。
その二つが一つになったものが、mokueca(モクエカ)です。
でも、mokuecaは完成した瞬間から完成品になるわけではありません。
そこから先は、身につける人の時間が始まります。
今日は、この香り。明日は、少し違う香り。嬉しかった日。少し疲れた日。大切な人と過ごした日。何気なく過ぎていく、いつもの一日。
お気に入りの香りを纏いながら過ごした時間が、少しずつ、その人だけのmokuecaに重なっていきます。
木が重ねてきた時間に、香りという新しい時間を重ねる。そして、その上に、あなた自身の時間を重ねていく。
それが、私の考えるmokuecaです。
今日をごきげんにする、小さなきっかけに。
アクセサリーを身につける。香りを選ぶ。鏡を見て、少し嬉しくなる。
ふっと笑顔になる。自然と、ゆっくり深呼吸する。
そんな小さな瞬間が、一日の中にひとつでもあったら。
それだけで、いつもの一日が少し違って見えるかもしれません。
mokuecaが目指しているのは、特別な日だけに身につけるアクセサリーではありません。
日々の暮らしの中で、そっと寄り添ってくれるもの。
いつもそばにいて、一緒に時間を重ねていけるもの。
そんな、相棒のような存在です。今日をごきげんにする、小さなきっかけに。
それが、mokuecaに込めた想いです。
そして、私自身の新しい挑戦。
mokuecaの物語は、ここで終わりではありません。むしろ、ここから始まります。
まさか48歳になって、「木工を学びたい」と思うようになるなんて。少し前の私は、想像もしていませんでした。しかも、これから挑戦しようとしているのは、長い年月をかけて職人さんが培ってこられた寄木の技術。
簡単ではありません。すぐに身につくものでもありません。途方もないことだって、分かっています。
それでも、やってみたい。そう思いました。
木工の経験もない私に、大切に積み重ねてこられた技術を学ぶ機会をくださったこと。その入口を開き、新しい挑戦の機会を与えてくださったこと。山口木工さんには、感謝しかありません。
このご縁がなければ、この挑戦は始まっていませんでした。
受け取ったものを、次の人へ。
山口木工さんと出会って、私は木そのものだけではなく、
「時間をかけること」
「技術を受け継ぐこと」
「ものを大切にすること」
の意味を教えていただきました。
だから私は、ただ完成した寄木を受け取って終わりにはしたくない。
自分の手でものづくりを重ねながら、受け取ったものを、次へつないでいきたい。
人から人へ。時から時へ。そして、自分自身から、まだ見ぬ未来へ。
mokuecaを通して、そんな「つながり」を感じてもらえるものを、これからも作っていきたいと思っています。
48歳から始まる、新しい物語。
心が躍ること。心ときめくものに出会うこと。
「これ、好き。」「やってみたい。」
そんな小さな気持ちは、もしかしたら思っている以上に大きな力を持っているのかもしれません。明日を少し楽しみにする力になったり。新しい人との出会いを生んだり。人生を動かすきっかけになったり。
私は、そう思っています。
だから、心が動いた方へ、進んでみる。できるかどうかは、まだ分からない。それでも、
「できないかもしれない」から諦めるのではなく、
「やってみたい」から、一歩進んでみる。
mokuecaは、まだ完成したブランドではありません。もっと心ときめくものへ。もっと香りを纏いたくなるものへ。もっと、日々に寄り添うものへ。少しずつ、少しずつ。いただいたご縁を大切にしながら、これからも歩いていきたいと思っています。
未来へ、つづく。
木が重ねてきた時間。職人が重ねてきた時間。私自身がこれから重ねていく時間。そして、mokuecaを手に取ってくださる方が重ねていく時間。
そのすべてが、ひとつにつながっていく。
時と人をつなぎ、
香りを纏うアクセサリー。
それが、mokuecaです。
今日、mokuecaに出会ってくださったあなたの毎日にも、小さな「好き」や「嬉しい」が増えていきますように。
そしていつか、「このmokuecaと、こんな時間を過ごしたな。」
そんなふうに思っていただける日が来たら、私はとても嬉しく思います。
mokuecaの物語は、まだ始まったばかり。
未来へ、つづく。
mokuecaを生み出してくださった方
山口木工
長い年月をかけて育まれた木と、受け継がれてきた技術。
その一つひとつを大切にしながら、寄木を生み出しておられます。
この素晴らしい出会いと、新しい挑戦の機会をいただけたことに、心から感謝しています。
木が重ねてきた時間に、香りという新しい時間を重ねる。
そして、あなたの時間を重ねていく。
今日をごきげんにする、小さなきっかけに。